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サッカー五輪出場決定までの過程に学ぶ

このブログの趣旨と少し離れるのですが、感じる部分があったので今日はこちらについて記載したいと思います。

昨日23歳以下のサッカー日本代表が五輪出場を決めました。先制して追いつかれ、ロスタイムで決めた決勝ゴールに歓喜の輪が広がりました。

”勝てない世代”と言われた彼らを率いた手倉森監督の全員サッカーで勝った手腕は素晴らしいもので、分野は違うのですが、ここに多くの人材育成に関するポイントが詰まっていたような気がします。

まず第一に、現実的な戦略をたてたこと。

相手との戦力差や自チームの準備状況を考えると一方的に勝てる相手は1つも無かったように思います。攻撃ではなく、まず守備から固めて、我慢して最後に攻撃に移り少ないチャンスをものにする。この戦略を徹底しました。批判も多かった采配ですが、勝負は結果が全てです。孫子の言葉に「小敵の堅なるは大敵の擒(とりこ)なり」という言葉があります。勢力が弱いものが威勢を張って大きな勢力の敵に向かうことは相手にとって格好の餌食になるという意味ですが、しっかりと自分たちの立ち位置を理解し、戦いに臨んだということが勝利につながったのではと思います。

次に、全員に競争を意識させ、偏った采配をしなかったこと。

予選を通じて、第3ゴールキーパー以外の全ての選手を出場させました。日替わりにヒーローが生まれ、チームが一丸となっていく雰囲気が見ていても感じることができました。「善く戦う者は、之を勢に求め、人に責めず」という言葉がありますが、勝負は特定の人にだけを頼ることなく、チームとしての勢いが重要です。特に短期決戦の場合、ケガや思いがけないトラブルも出てきます。そんな時に総合力を高めるということは、控えメンバーのモチベーションもアップしますし、特定のエースに危機感も感じさせます。今大会で言うと、久保や南野といった海外で活躍する中心選手でも特別扱いせず、時にはベンチに下げ調子の良い選手をどんどん使っていきました。公正な競争を公正な眼で行うというのは簡単なことではありませんが、これが指揮官にとっては重要なポイントだったのではと思います。

最後に、戦略と信頼を融合させたこと。

昨日のスターティングメンバーを見て、三つほどポイントがあったのではと感じました。
一つはCBでこれまで中心だった岩波ではなく奈良を使ったこと。各年代の代表で岩波は守備の中心選手としてプレーしてきました。特に昨日先発した植田とはCBでの良きライバルにあたり、総合力では確実に岩波を使うと想定されました。ところが、対戦相手の特性を鑑みて対人とスピードに対する強さがある奈良を先発させ、その采配が的中しました。
二つ目は南野を最後まで使ったことです。この年代では海外でも活躍しエースと言われる彼も今大会あまり調子が良くなかったように思います。前の試合のイラン戦では全く起用されていなかったにも関わらず大事な試合をエースに託しました。そして彼は最後の最後で決勝ゴールに繋がる前のキーパーを引き出すクロスを供給し、劇的ゴールを演出しました。上述のポイントと正反対のポイントではあるのですが、エースに最後は託すという決めを貫いたことが勝利へ繋がったのではと思います。
三つ目はキャプテンの遠藤を最後まで起用したこと。イラン戦のあと、足に違和感があり別メニューでの調整をしていたと報道された遠藤をやはり最後まで使いました。彼はこのチームのキャプテンです。昨日の試合で誰が一番のパフォーマンスを発揮していたかと言われると、自分は迷いなくこの遠藤選手を挙げます。守備に対する意識、どこにでも顔を出し体を張り守備の要となるとともに、時に攻撃の起点となる。チームメンバーに激を飛ばし、主将としてチームを牽引する。ケガを押しながらもこの大事な一戦で最高のパフォーマンスを出すことができたことは、試合終了後の彼の涙が物語っていました。試合後のインタビューで目頭を押さえつつ、キャプテンとしてのメッセージを伝えていた彼の姿に非常に心を打たれました。この大会で誰よりも成長したのは間違いなく彼です。彼をキャプテンに任命し、勝負の一戦を託した。試合を重ねるごとに成長していくというのは理想の形です。手倉森監督は選手に座禅を組ませたり、ボランティアに積極的に参加させたり、人としての成長を促していたのですが、その最たる成果が彼の成長だったのではと思います。
戦略と信頼。簡単なことではありませんが、この2つを綿密に計画した指揮官の判断は素晴らしかったです。

こうして見てみると、ビジネスや会社経営におけるヒントも多く隠されているではと思います。

チームとして人を成長させる機会を創り総合力を高めるための手法を練ること、勝負にこだわる姿勢、最終的な信頼を現場に委ねる胆力を持つこと。

そんなことを考えさせられた昨日の快挙でした。

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