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「逃げるは恥だが役に立つ」の事実婚について社会保険労務士としての考察

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現在放送されているドラマで最も人気のある「逃げるは恥だが役に立つ」。

ドラマの中で新垣結衣さん演じる「森山みくり」と星野源さん演じる「津崎平匡」が契約結婚としての事実婚の中から、恋愛関係に発展していくというお話しですが、社会保険労務士として、話題にもなっている「雇用関係のある事実婚」に関して、少し違和感がある部分があったので考察してみました。

第1話で、事実婚を迫られた津崎は、労働契約としての給料が発生する事実婚を検討し、自分にもメリットがあるとして受け入れます。

これは、同居しながら家事等を行ってもらい、食事も外食でなく調理したものが食べることができ、節約にもなるというものです。加えて、扶養に入れることにより税金の控除を受けたり、健康保険や年金の加入というメリットを享受できるといった合理的な手法です。

という話の流れだったのですが、ここが社会保険労務士として違和感をおぼえたポイントです。所得税に関する扶養控除に関しては事実婚は受け入れられていません。(国税庁HP)また健康保険の扶養に入れるには内縁の関係を証明する書類(お互いの戸籍謄本や同居している住民票)を会社に提出する必要があります。(年金機構HP)こういった書類を提出していた場合、会社にもおかしいと思われる可能性は大です。また、給与が発生する契約という設定のため、津崎は雇用主として事業の届出と給与支払事業所の開設届、支給する給与に対しての源泉徴収などを行わなければなりません。また一定以上の勤務であれば雇用保険に加入する手続きをしないとなりません。こういったことを考えていくと、雇用主としての契約結婚というのは金銭的なメリットは多くなく、手間もかかるため非常に無理のあるやり方なのではということが考えられます。

その中で、もう一つの考え方として、19万4千円の月額給与と設定されている中から、生活費などを控除して渡しているという設定を考察します。そもそもマンションに住みながら、住み込みの家事使用者に月20万近い給与を払うというのはよほどの高収入でないと難しいのは分かると思います。その中で引っ越しを検討するシーンで家賃を二人で負担しているということを言っていたので、この月額給与の19万4千円より、家賃代、生活費、食費などは控除して渡しているはずです。そのため、実際の手取りは10万を切る金額になると想定されます。通常の雇用契約で生活費や食費を折半して控除するというのはあまり考えられません。

このように考えていくと、この事実婚は雇用関係ではなく、民法上の契約と考えられるかと思います。民法上での契約は私人間において、契約自由の原則があり、下記の自由が定義されています。

  1. 契約を締結するかしないかの自由
  2. 契約相手を選択する自由
  3. 契約の内容決定の自由
  4. 契約の方式の自由

こう考えていくと、雇用契約というのはやはりあり得ず、二人の私人間における「自由意思」による契約関係と考えられるのではと思います。そのため、「雇用主として」という津崎の言葉には違和感がいっぱいです。

というようなことを、社会保険労務士として「小賢しく」考察してみました。

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